キャタピラー

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遅ればせながら、若松孝二監督の映画『キャタピラー』をレンタルDVDで見ました。寺島しのぶが昨年のベルリン映画祭で銀熊賞(主演女優賞)を受賞した、あの映画です。寺島しのぶは、日本の女優のなかではユニークな体当たり演技派という特別な地位を不動のものにした。そういう印象の映画ですね。

戦地で華々しい武勲を挙げて帰還した傷痍兵の夫は、両手両足が奪われ、顔の半分はケロイド、言語障害のうえ難聴とまるで丸太のような姿に変わり果てて、妻、寺島しのぶの元に戻されてきます。茅葺き農家の平凡な農夫は勲功によって少尉昇進、勲4等を授与された「生きた軍神」となります。新聞は最大級の賛辞で夫の功績を称え、村の誇りとされ、寺島しのぶは「生きた軍神の妻」の覚悟を演じます。

冒頭から反戦のメッセージが強い作品です。この軍神の妻役の寺島しのぶは監督に「いちばんモンペが似合う女優」(インタビューでの回答)ということで、起用されたそうだが、この映画では、大日本国防婦人会の白い割烹着姿か、野良作業のモンペ姿かという汚れ役のうえ、夜はしばしば全裸という体当たり役。、

寺島しのぶは、ご存知のとおり、梨園の名家、尾上一門の出身。父は尾上菊五郎、祖父は尾上梅幸、弟は尾上菊之助、そして極めつけは母が東映ヤクザ映画の大スターだった藤純子(今は富司純子)という毛並みの良さに恵まれているけれど、女性に冷たい歌舞伎の世界や大物すぎる両親の名声反発したのか、女優には珍しくハードな体当たりの汚れ役を進んで演じる。そうした分野での作品2作(赤目四十八滝心中未遂、ヴァイブレータ)で日本アカデミー賞主演女優賞を受賞、今回はさらに大きな金的を射止めた。

なにしろ異色のピンク畑の映画界から進出した若松監督と丸太のような帰還兵の夫を迎えた妻という特異な設定のシナリオだけに毎日が「食って、寝て、やるだけ」の凄まじい場面、とくに繰り返される「やるだけ」の濡れ場には圧倒される。R15やR18の指定もないようだが、そうとうきわどいシーンが多い。お国のために丸太のようにされた男の夜が、こうならざるをえないのは、一体全体、だれのせいか。だれが報いてくれるのか。壁に両陛下の御真影が掲げられ、名誉の勲章三個が並べられている部屋で、夫婦は悲痛な涙に暮れる。

寺島しのぶが「裸になるのは衣装の一つですよ」(インタビューでの返答)という割り切り方で熱演している。おそらく受賞の大きなモチベーションになっているだろうと推察される。寺島しのぶは、次はどんな作品にでるのかな。梨園育ちのお嬢さんという、こちらの先入観が強いので、彼女が選ぶ体当たりの演技派路線は一層、興味深いですね。

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