読書 『戦後史の正体』



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孫崎亨 『戦後史の正体』(創元社)

硬派の本だが、昨年は20数万部が売れたという。外務省キャリアというのは、たいがい体制遵守派で、退職後も政府やリーダー批判をしないタイプが多いのだが、筆者は国際情報局長や駐イラン大使を歴任しているにもかかわらず、意外というと失礼ながら、非常にリベラルな見方で、敗戦時からの日本の政権、外務省の外交方針や安全保障施策を批判し、なかんずく歴代首相を国益の観点から色分けして論評して興味深い。

日本は講和条約で独立国に復帰しているものの、安保条約にもとずく経済、安全保障に関しては、いまも米国の保護国、もしくは属国であり、歴代首相のいちばんの大事は、米国との関係をどうするかであり、外務省はいつも米国の方に顔を向けているとしている。

首相色分けの基準は、「自主路線」か「対米追随路線」かの二つである。つまり、国益のために独自の施策を打ち出したか(打ち出そうとしたか)という見方と、アメリカの言いなりだったか、という見方の違いである。アメリカの言いなりであっても、それが日本の国益に沿ったものだったか、国益を損ねてまでも、言いなりであったか、そこのところは微妙です。

筆者は歴代首相をほとんどマナ板に上げていますが、主な首相の色分けを今に近い方から言うと、

自主路線派

鳩山由紀夫 普天間県外移転、東アジア共同体
細川護煕  樋口レポート作成、多角的安全保障提唱
宮沢喜一  基本は対米強調だが、クリントン大統領には対等以上の交渉
福田赳夫  ASEAN外交推進
田中角栄  日中国交回復
佐藤栄作  沖縄返還
鳩山一郎  旧ソ連との国交回復
以下、省略

対米追随派 

小泉純一郎 自衛隊海外派遣、 郵政民営化
中曽根康弘 不沈空母発言、円高基調
三木武夫  田中角栄追い落とし
池田勇人  安保封印、経済特化
吉田茂   安保、経済両面で完全対米追随
以下省略

その他大勢の自民、民主首相は多くは対米追随路線だが、

一部抵抗派として

福田康夫  自衛隊派遣拒否 破綻米金融会社へ融資消極
橋下龍太郎 五輪中の米軍武力行使自粛要求、米国債売却発言
竹下 登  金融では協力、自衛隊協力要請には拒否
鈴木善幸  米の防衛費増額要求拒否など

がいるとしている。

自主と追随路線の差は、
一、常に米国と良好な関係をめざし、米国のいいなりになる
二、少々、米国と波風をたてても日本の国益を守るときは、はっきり主張するか、
にあります。

米国が日本の首相や外務省に対して、敏感に反応する点は以下の3点
一、米国の安全保障、世界戦略について
二、冷戦後は対中国関係について
三、米国の貿易・経済政策について

これらの問題は米国の「虎の尾」ですから、これを踏むと、米国は容赦なく首相はじめ政治家の失脚をや取り潰しを画策し、政権交代を求めてくる。その例の一つが、ロッキード事件に巻き込まれて退陣、失脚した田中角栄首相。アメリカが時期尚早とする対中国国交回復を図った、繊維貿易交渉で米国の言いなりにならなかったことが、虎の尾に触れた。奇々怪々なかたちでロッキード事件が浮上した。近年では普天間基地を最低でも県外移転と叫んだ鳩山由紀夫も、米国が政界、経済界、マスコミの背後で旗を振って、追い落としたと見ています。

自主路線派の首相はおおむね短命、ころころ変わる歴代首相にあって、比較的長期政権を築いて、小泉、中曽根、池田、吉田たちは、みんな対米追随路線派であるということからもわかる。筆者は、米国は自国の国益を守るためには情報機関の暗躍、カネと力のよる妨害工作などなんでもあり、ふだんから親米オピニオンリーダー、マスコミ醸成に余念がないと理解している。

さて、お腹が痛いと言い訳して政権を投げ出した安倍首相は、前回も追随路線派であったことから、今回も必ずや追随路線を歩むだろうが、不可思議な戦前回帰を目指すという極右的政治信条が、本物であれば、米国との間で安全保障や歴史認識で齟齬をきたすことであろう。いまのところ対中強硬策とTPPとで米国のポチになっているようですが、、、。これはブログ筆者の思うことです。

孫崎本はもともと高校生にもわかるようにとの出版要請で書き下ろしされたもので、大変読みやすく、わかりやすかった。

(写真はGOOGLE引用)

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