御嶽山の登山条例

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岐阜県が条例で御嶽山と焼岳の火口周辺への立ち入りには登山届を義務づけて、違反すれば5万円以下の過料にすると決め、来年4月から施行します。言うまでもなく今夏の噴火に伴う惨状を踏まえての措置でしょう。

登山の愛好者の一人として、複雑な気持ちです。なぜかと言いますと、登山というのは、もともと過酷な気候や地形という大自然のなかで自らの身体能力を試す趣味のスポーツです。したがって、危険が予期される地域へ立ち入る登山者にはそれこそ自らの命や安全は自己責任という原則があります。

危険だからやめとけ、といってしまえば、エベレストや富士山登頂はありえないことになります。都市近郊の低山でも街歩きよりははるかに危険が待ち受けています。地形が起伏に富み、急坂、でこぼこ道だからやめとけ、空模様が急変しやすいからやめとけ、といいだせば登山というスポーツは成立しません。

余談ですが、登山はバスケや野球のような競技スポーツではありません。特定のルール、施設があり、他者と能力を競うと言う意味のスポーツではありません。

登山の自由という問題は、初めて登山条例が富山県で制定されたときに議論されました。昭和41年のことです。当時、富山にいましたので、その是非に大きな議論になったことを思い出します。当時、冬山の北アルプスで登山事故が多発、人命が損なわれました。救援救命に向かう県警警備隊や地元民の負担も大きなものでした。

遊びに過ぎない登山者のために血税を使って救助活動を行うことのムダ、遭難をハタ迷惑と見る側から、なんらかの規制が必要だという意見が強くなりました。人命を尊重する観点からも議論されました。

はじめは特定の山への登山者の入山禁止という制限まで論議されましたが、結局、積雪期の冬山になる時期を限定、入山地域を特定して、そこに入る登山者・グループに登山届の提出を義務付けることで落着しました。対象は剣岳だけとなりました。その翌年、魔の山といわれた谷川岳を抱える群馬県でも、条例が制定されました。

しかし、この措置は厳冬の山へ入山したい人へじっくり慎重な再考を促す効果はあるものの、登山届を出したからと言って、遭難を予防するものではなくて、遭難が起きたとき、救命救助活動をスムーズに行える効果しか期待できません。

ただ、その後の登山界の傾向として、積雪期登山や危険な岩壁をクライミングするような登山形式が急速に衰退し、代わりに登山大衆化の時代が始まりました。それが中高年登山者の急増や山ガールの進出となった結果、富山や群馬の条例が適用されるような登山は影をひそめてきました。自身の能力だけでもって命と引き換えるような冒険ないし挑戦の登山は姿を消してしまった。

こんどの岐阜県の条例では御嶽の方は火口周辺の半径4キロ以内、焼岳では半径2キロ以内に登山届なしには入れないというものですが、逆にいえば、届を出せば入ってもいいわけですから、今夏のような不意の大噴火が起きたら、それは登山者の自己責任ということになるのは変わりがありません。こんご新たな犠牲者が出ても、行政は一定の慎重な配慮したというエクスキューズにはなるでしょう。

遭難防止に関する条例の制定は、登山者に対する警告です。昔と違って登山が一般化し、多くの登山未経験者が山におしかけ、観光登山や健康登山になってきた現状では、登山者の行動を制限する条例の制定なんかよりも、噴火予知情報の的確な公開や適切な登山ガイドの育成と配置、登山道や道標の整備、標高に応じたいくつもの堅固なシェルター(避難場所)の設置などが望まれます。

そうした安全環境を整えたうえで、あとは登山者の自己責任ですよ、というのが現状の登山というスポーツにふさわしいと思われますね。

                                                     (写真はGOOGLE引用)

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