読書 『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないか』

作家、矢部宏冶さん著、「集英社インタナショナル」から出版されたのが表題の本です。戦後ずっと続く日米関係の暗部を冷静に実証的な筆致で暴いて大きな衝撃を与えられる話題の本です。13年3月15日付けで、このブログで紹介した孫崎亨さんの『戦後史の正体』に継ぐ戦後史再発見双書です。

imagesw.jpg

国民の大勢がいま、再稼働に疑念を持っている原発にしろ、沖縄の辺野古基地移設問題にしろ、安倍政権は民意を平気で無視して強行しようとしています。こころある国民は、この国は、この国の政権は、どうしてこんな理不尽なことを行うのか、その正体がつかめぬまま、,漠然とおかしいなと常日ごろから不信感をもっているわけです。閑人も怒っています。

この本は、そのなんだかヘンだなと思うのは、主権国家の国民なら極くまっとうな感慨であるけれど、実を申せば、70年前の敗戦いらい国民の命や暮らしにかかわる大切な施策、つまり外交や安全保障や経済問題などにかかわる事柄について、日本政府は単独では決して決める力を持たない。常にアメリカの顔色を窺い、アメリカの吐く息を生々しく受け入れなければならない隷従システムがあることを教えてくれます。

つまり、基地のしろ、原発にしろ、問題の根は同じ、すべてアメリカの国益に沿うか否かによって、がっちりと縛られていて、日本の主権は、主権があるかのように装われているいるのに過ぎないという仕組みがあるということです。

わかりやすい事例では、アメリカの要人、軍人、CIA工作員らは、米軍基地内の飛行場に降り立って入国、パスポートなどのチェックを全然うけることなく、日本国内のどこへでも行けて、また自由に出国しています。日本の主権は完全に無視されています。

この本は、よくある陰謀論や針小棒大な暴露モンではありません。日本を動かしているのは、日米安保条約、その関連の日米地位協定、ならびに公開されていない密約によってであること、これによる日米間の取決めは、最高法規であるに日本国憲法よりも上位に位置すること、そしてアメリカに違法性、不当性があったとしても、「高度の政治性がある問題については司法の審査権が及ばない」として最高裁までもジャッジ放棄していること、要するに、日本はいまだに米軍の占領下にあるのと同然であることが、ちゃんとを論証しています。

この取決めを行う政府組織は「日米合同委員会」という平凡な名称です。そこで何が取り決められているか、一般の国民が知らないのは当然です。たとえば、普天間の移転先を「国外、最低でも県外へ」と主張して政権を獲得し、わずか9か月で退陣に追い込まれた鳩山元首相は、この本を読んで、「ぶったまげた」、「恥ずかしながら首相のとき、そういう裏があることを知らなかった」、「ただ、官僚らがなにか別のもののために動いていると感じていた」と述懐しています。*1

とかく宇宙人などと揶揄される鳩山さんのことだから、さぞかしボンヤリした首相だったのだろう?。実はそういうマンガチックなことではありません。この組織を作って参加しているのは敗戦いらいの歴代の外務省、法務省(主に検察畑)、財務省などの一部官僚と米国の政府、軍部関係者だけだからです。国会議員さえ、この組織について知見を持っている者は多くないようだ。

この本では、たとえば委員会で職責を果たした歴代の法務省関係者は17人中、12人が役人のトップである事務次官にまで昇進しているし、さらに、そのうち9人は検事総長まで上り詰めています。エリート官僚のエリートコースであることがわかります。鳩山元首相が基地移転にからみ一部官僚に緘口令を敷いて話した秘密施策案が翌日の新聞にすっぱ抜かれて、つぶされます。官僚がばらしたのです。「なにか別のもののために動いている官僚」群が政府部内にいるわけです。

こうしてみると、日本政府のなかに日本を動かしている「非公開の決定機関」があって、日本の安全保障も政治も、それに司法や経済問題も、その動向が、そこで定められているということです。日本という国は、まったくアメリカの属国であることを改めて示唆してくれます。さらに唾棄すべきことは、その属国体制を一部のエリート官僚が唯唯諾諾と協力し、自身の保身・出世につなげていることです。


この合同委員会というのは、日米で下記のような組織*2を作り、両国の代表者が月2回の定例会を、都内の米軍御用達の施設で開いています。日本側のトップは外務省北米局長、米国側は、在日米軍司令部副司令官、駐日公使らです。協議の内容は非公開とされています。

在日米軍の軍人とアメリカの国務省の一部局ではないかと言われる対米追従の外務省の北米局長が相互の交渉相手でありますように、この委員会の本質は日本国内での米軍の安全保障に関わる問題を、いかにアメリカ側の権益に寄与できるかを協議する機関であることを物語っています。首相や大臣が、なんらかの所信を具体化しようとして、これらの官僚は「アメリカ側と協議の結果」、ダメだと封じ込めます。

shistem.jpg


在日米軍の権益についてといえば、たとえば米軍基地は全国どこでも、いつまでも、米軍が望むところに敷設できるし、米軍の航空機は沖縄ばかりでなく、、日本全国、いつでも、どんなコースでも、飛ぶことが認められています。そのうえ、たとえば首都圏あたりでは上空数千メートルまで米軍が占有していて日本の国内航空機は―――たとえば、羽田→大阪間ーーーずっと大幅な迂回飛行をさせられていること、その米軍機は米軍人軍属、家族が住む住宅地を避けて発着していること、これは沖縄の普天間基地の航空機発着の航跡からも立証されていること。

つまり、万が一の墜落事故が起きたとしても、日本人が住まうサイドに落ちることになっているわけです。このようなめちゃめちゃな話をエリート官僚たちが認めているのです。日米合同委員会は在日米軍とアメリカの国益にいかにして、特権と与えるか、という組織です。こんなことを容認している主権国家は世界中どこにもないでしょう。

フクシマ原発についても、あれだけの大惨事をこ起こしながら、だれも刑事責任と問われず、原子炉内の詳細な技術的な検証や修復作業等が明らかにならないのに、再稼働だけは既定路線のように進められています。

これは日米原子力協定の条文内にある「安全保障に資する」という文言でもって秘匿されているからだとしています。日米原子力協定というには、表向きは、原子力の平和利用のための取決めですが、その内容は日本がアメリカの核燃料を買入れ、アメリカの運用技術を受けいれ、核燃料廃棄物の再処理も含めて、アメリカに原子力を支配されている協定です。

この原子力協定の一番の底意というのはアメリカが日本の核武装化を阻止することと、アメリカの国益に合うように運用することです。そのために同協定の第11条に「国家の安全保障の利益に合致するように締結し、かつ誠実に履行する」という文面が挿入されています。フクシマで起きたこと、原子炉内部のこと、汚染除去の問題などあらゆる原発がらみのことは「アメリカの安全保障」に合致するか、しないかのレベルで明らかされているわけ。

いま何も公表されていないということはアメリカの安全保障にかかわることが大きいからだいうことを意味しています。在日米軍の特権と同様に原子力についてもアメリカ優先の取決めです。この原子力協定は付属書などを除くと、全文わずか16条項のものですが、そのうち12条項までは協定が停止、あるいは終了しても効力が持続されます。こんな不平等で一方的な二国間協定があるのか、この労作は慨嘆しています。

昨今の大きな政治的な課題、つまり安倍政権が強行しようとしている軍事力強化が眼目の安保法制整備、理不尽な辺野古基地移設、人権無視の原発再稼働、アメリカに追随した結果、国際的に孤立したAIIB(アジアインフラ投資銀行)参加問題などにすべて底流していることが、この本が、明らかにしてくれます。いま一番のオススメ本です。

(本の写真はGoogle引用)

*1 『週プレNEWS』 14年12月16日、矢部宏冶・鳩山元首相対談
    http://wpb.shueisha.co.jp/2014/12/15/40591/
*2 日米合同委員会組織図は外務省ホームページ。委員会のもとに30以上ある分科会などは、引用者が省略。

コメントの投稿

非公開コメント

最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
月別アーカイブ
カテゴリー
プロフィール

tajifu

Author:tajifu

ブログ内検索
RSSフィード
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる