人口減は悪いのか

孫娘も迎えたことしの成人式でした。例年、式場内外で傍若無人に暴れるバカがいますが、ことしは少なくて、おめでたいことでした。若者は冷静なのに、いいトシをした千葉県・浦安市の市長が、新成人へのあいさつのなかで、奇怪な熱弁をふるってました。*1

いわく「日本産婦人科学会のデ―タでは、出産適齢期というのは、18歳から26歳だから、若い皆さんに大いに期待したい」と出産の奨励を煽りました。その後の記者会見では、「産まなければ人口が増えない。率直な思いだ。超高齢化を支え切れない」とあいさつの真意を補足しています。

この談話に引き合いに出された日本産婦人科学会が、直ちに「出産適齢期を定義したデータはない」とあっさり否定しています。*2 

閑人は、この国に少子・高齢化が進んでいることは認めますが、少子、つまり人口が減ることが、なんでそんなに危機的なのか、そして、生む生まぬといった女性の生き方にまで地方自治体の首長が口出しするのか、そこらへんが理解に苦します。

人口減を懸念する言説のほとんどは、人を生産の担い手、つまり働き手と見る視点から出ています。働き手が少なくなることで、いまある産業構造や経済成長を支えきれない、経済成長がマイナスになれば、国力なり社会なりが活力を失い、衰退するというものです。人口減を経済活動とからめて心配するのが特徴です。

人口減という現象は、生産者も経るけれど、同時に消費者、利用者も経るわけです。たとえば、月産1万台の自動車会社が500人の従業員で生産しているとすれば、月産500台、従業員250人に半減すればいいわけです。月産1万台を維持、あるいは、さらに月産を伸ばしたいとするから、人口減は困ると考えているのです。飯を食べる人が減れば、産米量を減らせば済みます。

そんなことでは経済成長がマイナスになる、国際競争力が劣ると主張する人は、大量生産、大量消費で成り立つ経済成長の右肩上がり神話を信じているのです。器に合わしてモノを作れば、いいのであって、器に盛り切れないものをたくさん作ることで、経済活動が活況だ、GDPアップだと考える経済成長はもう不必要だと考えます。人口の縮小段階に応じた生産活動をすればいい。大きく言えば地球環境の悪化も食い止められるのです。

目を転じて見ると、世界に約200カ国もありますが、国別人口ランキングでは、日本は11位。実に1億2000万人もいます。1億を超えているのは12カ国に過ぎないから、日本が人口不足というのは決して当たらない話です。*3

一方、経済活動の大きな指標とされるGDP(国内総生産)は、米中に次いで堂々の3位。独英仏がそのあとに続きますから、日本はいまも経済大国であることに変わりありません。*4

しかし、二つの統計が示しているのは、人口大国イコール経済大国ではないことです。人口トップテンとGDPトップテンが重なるのは、米中伯露の四カ国にすぎません。そのうち中伯露は、BRICsといわれる新興経済国。10位内のインド、インドネシア、パキスタン、ナイジェリア、バングデッシュはまだ開発途上国です。先進国扱いは米とメキシコの二カ国にすぎません。人口が多いことは必ずしもお金持ち国でないということです。
 
ヨーロッパ文明と文化を支える英仏伊は、人口では日本の6割程度、独がやっと7割くらいです。社会保障が行き届いていると評価される北欧のデンマーク、スウェーデン,ノルウエー、フィンランドの4カ国にいたっては、いずれも人口1千万人にも満たないのです。

国連が各国の国民の幸福度調査:*5というヘンな調査を3年来、公表していますが、調査対象国158か国のうち、日本は46位です。、、、、へンというのは、こうしたメンタルな側面を数値化するのは、難しいと思うからですが、、、、それでもトップテンには北欧の4カ国やスイス、カナダ、アイスランド、ニュージ―ランドなどが入っています。なるほどと思う国々です。人口大国でも経済大国でもない国々なのが意味深いところです。

閑人の考えるところでは、日本の人口問題は、実際には年齢構成問題、そして偏在問題です。後者は東京一極集中と地方の過疎化で一目瞭然です。

前者は、少子高齢化です。浦安市長はじめ、かつて「女は産む機械」と評した柳沢元厚労大臣*6や「産まなくなったババアほど役に立たないものはない」とほざいた石原元東京都知事*7たちの妄言が、これです。政財界に多い危惧感の元も、これだと思います。彼らは国民をニワトリとおなじように見て、廃鶏か、卵を生む鶏かとしか見ていないのです。

日本が急速に高齢化社会になることくらい、とうにわかっていたことです。地震や噴火と違って人口予想は未来予想でもっとも確定度が高い予想です。年齢構成を見れば、何十年先まで簡単にわかるからです。

一方で国民が少子出産している理由は山ほどあります。その様々な障壁を解消する施策を怠ってきて、いまさら出産奨励を煽るのは不見識です。高齢社会に伴う衣食住全般にかかわる介護問題を、政治家は票にならないから軽視し、国は、それならと不作為を続けていたのです。

幸福度が高いとされる北欧では医療費は無料、保育・幼稚園から大学院までの教育費も無料、介護福祉施設は行きと届き、労働時間も短いです。出産奨励を言う前に子育て環境が整えられれば自ずから道は開かれます。

消費税10%アップ分は全額、社会保障へという公約を平気で破り、増税増収分にぴったり見合う額で大きな企業の法人税減額分をカバーするという方針です。こんなウソをつく国に対して、国民が子どもを多く生まないのは、まったく正当な生きる知恵です。生む生まないは、最終的には女性が決めること、権力者が煽るとロクなことがありません。

アベあたりが最近強調する人口問題発言には、富国強兵信仰が下敷きにあり、将来の「わが軍」の成り手不足を懸念している節もあって、油断なりません。戦前、「産めよ増やせよ政策」を国策にし、結婚年齢を3歳下げて、子どもは5人産めと奨励、将来の兵隊予備軍をつくる多産家庭を「子宝部隊」と国が表彰した歴史がある国です。*8

*1 1月11日 毎日新聞電子版
     http://mainichi.jp/articles/20160112/k00/00m/040/037000c .

*2 1月14日 朝日新聞デジタル
http://www.asahi.com/articles/ASJ1G72LLJ1GUBQU00H.html

*3 世界の経済 統計情報サイト
    http://www.globalnote.jp/post-1555.html 

*4 GLOBAL NOTE
  http://www.globalnote.jp/post-1555.html 

*5 【世界幸福度ランキング2015発表!】世界で一番幸せな国は?日本は何位?
    http://fundo.jp/27459

*6 柳澤厚生労働大臣「女性は産む機械」発言
   http://wol.nikkeibp.co.jp/article/column/20100112/105511/

*7  ババア発言
  https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%83%90%E3%82%A2%E7%99%BA%E8%A8%80

*8  出産強制の歴史
http://www.tanken.com/umeyo.html


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