メディアの敗北

まさかのトランプ勝利。
とんでもない人物がアメリカをリードすることになりました。
比較するにはレベルが違いすぎますが、大阪でもデマゴーグ(*1)が知事、市長になりました。しかし、なんら政治的事績をなすことなく一線から消えました。あるいは、消えたふりをしています。

imagesLCLBAXY0.jpg


トランプ勝利を見抜けないまま、クリントン優勢報道を続けたメディアは歴史的な失敗をしました。大番狂わせとマスコミはこぞって驚いていますが、これほどの大差となると、これはもうマスコミの予想分析した報道自体が負けたといっていい。トランプ支持が過半数を超える。マスコミは、その大きな潮流を読み損ねた報道を重ねていたことになります。

アメリカの新聞やテレビは候補者への旗色を鮮明にすることが普通に行われています。投票日直前の全米の新聞100社の候補者支持別(*2)でみると、ワシントン・ポストやニューヨーク・タイムズのような有力紙はじめ57社がクリントン支持を表明し、ニュース専門局のCNNテレビもクリントン支持でした。

一方のトランプを支持したのは、わずか2社。うち1社はトランプ側近の社だとありますから、これは当然。マスコミの大勢は、今回の大統領選はクリントンで一丁あがりという空気だったのに違いありません。報道に接する世界中の人々も、その報道に導かれていました。閑人もよもや逆転はあるまいと思っていました。今回の事態はマスコミのミスリードの典型例になるでしょう。

マスコミ側が、どの候補を支持す表明するかは自由です。しかし、問題なのは、その支持姿勢にとらわれた先入観のためか、正確な情勢分析を有権者に伝えることができなかったことです。二つの間違いを犯してしまったと閑人は考えます。それが選挙情勢の報道にもあらわれて、投票結果を“番狂わせ”と総括しなければならなかったのではないか。

一つはクリントンの不人気。日本人には情緒的な面なのでわかりにくいことながら、クリントン批判のコラムなどでは、かの国ではクリントンは高慢ちきで鼻もちならない出しゃばり、といったマイナスイメージを国民の相当数が持っていると伝えていましたが、このポイントを見逃した。多年の実績や政治信条がいいとか悪いとかとは別の、上から目線の金持ちおばさんに対する庶民の反発感情が強かった。

二つ目はトランプの強力なデマゴーグが、アメリカ国民の心をつかみ、浸透し、熱狂へまで高めていたことを低く評価したこと。数々の性的不祥事を報道されても否定し、メキシコの壁、雇用を奪う移民送還、テロにつながるイスラム教徒の排除、アメリカ・ファーストという保護主義を声高に叫び続けた。

批判や非難もなんのその、そのやまないデマゴーグに、ある種の信念を国民に感じさせた。こんな人物を支持すると公言できないけれど、ひょっとしたらひょっとする、そんな漠然とした期待感を持つうねりを見誤ったこと。

ほぼ一年にわたる大統領選挙選で伝えられたトランプの言動は、とても信じられないほど不適格者のイメージでした。それまでアメリカ国内を除いては世界中は、彼の名前を知らなかったと推察されます。日本でもまったく無名の人物であった。

その後に報道されるトランプの発言や過去の行動の数々には、政治家の資質どころか、人間的評価にさえ眉をひそめるようなことばかりでした。

しかしながら、今更の指摘ですが、テレビとインタネットに代表される情報社会にあっては、有権者に届く判断材料のほぼすべてが、人物の露出度によって決められています。

まるで洗剤や養毛剤やクルマの波状的なCMが商品の購買力や知名度につながるようにです。候補者は実現可能かどうかの判断抜きに、気を引くことをわかりやすく過激に叫んだ方が有利です。知性よりも感情に訴えます。

民主政治は一人一票。分別ある人も分別ない人も平等であるがゆえに、分別のない人が多いのが世のならいとあれば、分別のない人を焦点に、分別のない不満や不信感をかき立てて、ヴィジュアルにデマゴーグした方が勝つことをトランプは証明しました。大阪のアレとおなじです。コイズミの郵政民営化選挙でも、そうでした。B層(*3)という票田を生んだ選挙でした。

マスコミは事実を報道するが使命でありますから、仮に選挙戦術とわかりきっていても、とんでもない問題発言があれば報道せざるを得ません。複数の候補者の発言を選択的に傾斜報道すると公平性を欠くからです。

そこが大衆迎合のデマゴーグのつけ目であり、報道側のジレンマです。言った者が勝ち、あとは選挙戦術の一環だったと言い逃れるやり方です。このジレンマを解消する妙案はいまのところなく、選挙はますますデマゴーグ優位の流れになるにちがいありません。民主主義政治は、システムの必然的な予測通り、衆愚政治を招いています。

メディアは、言った者が勝ちというデマゴーグに対する報道姿勢と、有権者の少なからずを占めるB層へわかりやすい報道、踏み込んだ解説を提供しなければならない。その一方で潜在化するB層の動向をすくいとって、有意な羅針盤を提供しなければならないと思います。それにしても、これからの選挙はますます「トランプに続け」となりそう。いやな感じですね。

(写真はGoogle画像検索から引用)


*1 Wikipediaによると、「社会経済的に低い階層の民衆の感情、恐れ、偏見、無知に訴える事により権力を得、かつ政治的目的を達成しようとする政治的指導者を言う。デマゴーグは普通、慎重な考えや行いに反対し、代わりに至急かつ暴力的な対応を提唱し、穏健派や思慮を求める政敵を弱腰と非難する。

民主主義の基本・原理的な弱点、つまり究極的な権限は民衆にあり、その中でより大きな割合を占める人々の共通の願望や恐れに答えさえすれば(それらがどの様なものでも)政治的権力を得られるという点を利用した」やり方。

*2 2016年11月7日 NHKニュース

*3 2005年、小泉内閣が郵政民営化を図るにあたり内閣府が広告会社に依頼して、支持を得やすい国民層を分析したもので、自分で考える力がない。具体的なことは分からないが、テレビやマスコミ報道に左右されやすい。IQが比較的低い人たち。主婦層、若年層、高齢者層などをB層と定義。彼らの気を引く訴えをすれば目標が達成できるとした。

閑人が見たトランプ当選直後の夜のNHK番組で、国際政治学者、篠原帰一さんは、トランプ支持層を「白人、労働者、高卒、高齢者」と話していたが、デマゴーグの標的にされるB層と一脈通じている感想を持ちました。


コメントの投稿

非公開コメント

最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
月別アーカイブ
カテゴリー
プロフィール

tajifu

Author:tajifu

ブログ内検索
RSSフィード
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる